2019年5月に大阪国際会議場で日本耳鼻咽喉科学会総会が行われ、参加してきました。クリニックの都合で今回は1日のみの参加となってしまいましたが、それでもいろんなことを勉強させていただきました。
まずは朝のセッションで鼓膜小穿孔に対して行うinlay butterfly cartilage tympanoplastyの報告があり、簡便にできる鼓膜形成術の方法で当院でも取り入れることのできる方法と感じました。工夫して他の疾患にも使えそうな手技でとても興味深いものでした。
また、難病指定されている好酸球性副鼻腔炎の病態についての講演を聞くことができました。好酸球性副鼻腔炎の患者さんは当院でも多く、手術をしても再発をしやすく治療に難渋する疾患です。好酸球性炎症を引き起こすメカニズムを解明しようとする試みが基礎研究の分野で盛んにおこなわれています。鼻腔の上皮細胞の保護を強化をすることで上皮由来のサイトカインの産生を抑制することができ、また凝固・線溶系の制御異常がフィブリン網の過剰産生を引き起こすことが解明されています。これらの基礎研究によって病態の解明がされれば新しい治療方法がみつかる可能性があり、今後ますます期待される分野です。
「スポーツと耳鼻咽喉科」というシンポジウムを聞いてきました。スポーツに関連する科は整形外科、外科、内科などが主ですが、耳鼻咽喉科の疾患をかかえるアスリートは多く、我々耳鼻科の専門医もスポーツの分野に目を向けるべきとのことです。オリンピックの水泳メダリストである中西悠子さんの話から始まり、平衡覚、鼻腔生理学、運動誘発性喉頭閉塞症、アンチ・ドーピングの話など今まで大学で学ばなかったことが聞けてとても新鮮で興味深いものでした。
毎日クリニックで診療をしていると、疾患について考え、悩むことがだんだん少なくなってきてしまいます。学会に参加して自分の専門の話、専門外の話をいろいろ聞くことでリフレッシュでき、よりよい医療を目指して日々考えながら患者さんに向き合いたいと思います。