キノコの胞子が原因で長引く咳、のどの違和感、そして副鼻腔炎になることがあると済生会金沢病院の呼吸器内科部長の小川先生が第57回日本鼻科学会で講演されました。真菌関連慢性咳嗽(fungus associated chronic cough: FACC)と呼ぶそうです。2018年の咳嗽・喀痰の診療ガイドラインでこの疾患の概念が記載されるようです。
少し調べてみましたので解説させていただきます。
担子菌(たんしきん)とはいわゆる「きのこ」の菌。ヤケイロタケの真菌であるBjerkandera adusta(BJ)とスエヒロタケSchizophyllum commune(SC)が最も多い。
気道につくと咳の感受性が亢進し、喘息の誘発、咽頭違和感につながるそうです。アレルギー性真菌性呼吸器疾患をひきおこし、肺炎や副鼻腔炎をひきおこします。
抗真菌剤やステロイドが有効ですが、これらの真菌は居住環境に常にいるため、特殊な空気清浄機などを使用して環境から除去しないと再発してしまうようです。時期は9月から11月にピークとなります。
診断は、喀痰や咽頭のぬぐい液から真菌を同定できる、特異的IgEが陽性である、分泌物の好酸球が上昇していること、そして誘発検査が陽性であること等があるとのことでした。実はこれらの検査が常にできるわけではありません。いくつかを組み合わせて診断するしかないようです。
耳鼻科には長引く咳や咽頭違和感で来院される患者さんが多くいらっしゃいます。これらの中に真菌関連慢性咳嗽の患者さんがいる可能性もあります。今後はこういった疾患概念に注意して診療したいと思います。