当院で行う鼻中隔弯曲症の手術「鼻中隔矯正術」
鼻中隔弯曲症で鼻づまりにお悩みの方は、根本的な問題の解決のために手術をお勧めします。一般的な鼻中隔弯曲症には、鼻中隔矯正術を行います。
当院では、局所麻酔での日帰り手術を行っております。
手術の適応となるケース
- 薬物療法の効果がなく、ひどい鼻づまりが続いている場合
- 鼻中隔の弯曲によって生じた強い鼻づまりなどの症状が、日常生活に支障をきたしている場合
一般的な鼻中隔弯曲症の場合の手術
弯曲の強い箇所の軟骨や骨だけを切除する手術です。鼻中隔手術だけの手術時間は約20分です。
鼻中隔弯曲による鼻詰まりの改善・解消が期待できます。鼻中隔弯曲症の方は左右の鼻が非対称になっていることから、下鼻甲介手術を併用することがほとんどです。
手術方法
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① 鼻中隔の構造です。
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② 鼻中隔の弯曲です。
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③ 鼻の入り口からはいってすぐ、1cmぐらいのところで粘膜のみを切開します。
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④ 鼻中隔軟骨・骨から片方の鼻中隔粘膜を剥離(はくり)します。
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⑤ もう片方の鼻中隔粘膜も剥離したのちに、弯曲の強い部分を切除します。
軟骨と骨の接合部位を中心に切除することがほとんどですが、軟骨自体の弯曲が強い場合は前方の軟骨を切除し、まっすぐに矯正してからもとに戻すこともあります。
外鼻形態を保持するため、鼻中隔軟骨の前方、上方(L-strut)はさわることなく温存します。 -
⑥ 切開部を吸収糸で縫合します。
前方の弯曲が強い場合の手術
鼻中隔軟骨の前方の弯曲がある場合、または前方の軟骨が薄い方には、少し異なった術式で対応します。
鼻中隔後方の軟骨を切除し、前方の軟骨と縫合固定する手術です。
鼻中隔弯曲による鼻詰まりの改善・解消が期待できます。
手術方法
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① 鼻中隔軟骨の前端の弯曲。
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② 鼻中隔軟骨の前端にそって切開を入れて、鼻中隔軟骨から両方の鼻中隔粘膜を剥離します。
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③ 鼻中隔前方、上方の軟骨(L-strut)を温存し、それ以外の後方の鼻中隔軟骨は切除します。
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④ 前方の軟骨を必要に応じて矯正した後に、切除した後方の鼻中隔軟骨をトリミング(調整)し、鼻中隔軟骨の前弯部を補強する形で前方の軟骨と縫合固定します。
鼻中隔弯曲症だけでなく、肥厚性肥厚性鼻炎や副鼻腔炎を併発している場合
実際には、鼻中隔矯正術を単独で行うケースはそう多くありません。鼻中隔が弯曲している場合は鼻の中が非対称になっているため、肥厚性鼻炎を併発している場合には、下鼻甲介手術を同時に行います。
また、副鼻腔炎を起こしている場合には、副鼻腔手術を同時に行うことがあります。
鼻詰まり症状が起こる原因はさまざまで、複数以上の原因が絡み合って症状を悪化させていることもあります。
一度の手術で複数の原因を除去できる、また他の鼻の病気・症状のリスクを軽減できるという点では、手術を組み合わせることは選択肢の一つとして有効です。
鼻中隔弯曲症の手術Q&A
手術後、出血や痛みはありますか?
出血、痛みもあります。いずれも、自宅にて患者様ご自身での対応(詰め物の交換・処方する鎮痛剤の服用)が可能な程度ではあります。
手術後、大量に出血したときにはどうすればいいですか?
詰め物の交換では間に合わない鼻血が出たときには、鼻を押さえて下を向き、そのまま10分安静にしてください。10分経過しても止まらない、口から溢れるくらい鼻血が出る、というときにはご連絡ください。
手術を受けられる方には、24時間ご利用可能な、院長直通の電話番号をお伝えしております。また、スカイプ(テレビ電話アプリ)での対応も可能です。
仕事や運動はいつからできますか?
デスクワークでしたら、翌日から可能です。
2週間程度は、汗をかくような肉体労働、運動は控えてください。
その他、手術後の生活で気をつけることはありますか?
ゴルフをされる方は、コースを回っている際、出血が起こると救急搬送に時間がかかります。鼻からとはいえ大量の出血は危険ですので、3週間程度は控えてください。
同様の理由で、飛行機の利用もできる限り控えてください。
鼻中隔弯曲症の手術費用
手術名 | 保険点数 | 3割負担 | 備考 |
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※内視鏡下鼻中隔手術I型 | 6,620点 | 19,860円 | |
鼻中隔矯正術 | 8,230点 | 24,690円 | 前弯矯正の場合 |
※平成28年4月に新設された保険点数です。
上記の手術費用に加え、診察料、薬剤料、処方料などが加算されます。
鼻中隔弯曲症の手術で声が変わる?
声は鼻の中(鼻腔)や副鼻腔の空間で共鳴します。感冒やポリープ、形態異常などでこれらの空間が狭くなると鼻声、こもった声、つまったような声になることがあります。また、今まで狭かった空間が術後に広がると、声質が変わることもあります。
鼻中隔湾曲症手術のみでは鼻腔容積が大きく変わることはないため、自覚的にも他覚的にも声質に大きな変化はないと考えられますが、それに加えて下鼻甲介手術や、特に副鼻腔手術をした場合には声質が変わる可能性があります。
過去の報告では術後に鼻腔、副鼻腔の形態が変化することで10~30%程度の患者さんで声質が変わる可能性があると報告されています(日本鼻科学会、1997年、平川ら)。
当院での印象では、鼻腔手術(鼻中隔手術、下鼻甲介手術)のみで声が変わったとおっしゃる患者さんはあまりいませんが、副鼻腔の術後で副鼻腔容積が大きく変わった場合(副鼻腔の病変が悪く、術後に改善した場合)に、声が変わったとおっしゃる患者さんは一定数いらっしゃいます。
鼻中隔弯曲症の手術後、見た目が変わる?
結論からですが、鼻中隔矯正術の手術は注意して行えば見た目が変わることはまずありません。鼻中隔湾曲症は外傷でない限り、鼻中隔の大きさと外鼻の大きさの不均衡により鼻中隔が湾曲してしまうことで生じます。よって、鼻中隔湾曲症の手術はその不均衡を取り除くことになりますので、湾曲している余剰の軟骨や骨を除去することが必要になります。通常の手術では大きく2点の注意が必要です。
1つは除去する部位で、L strutとよばれる、鼻中隔軟骨のL字の部位ですが、外鼻を下から支えているため、そこをさわると外鼻の形態が変わってしまうといわれています。
もう1つは篩骨正中板前端が鼻骨前端(key stone area)に近い場合ですが、これは特に注意が必要でその付近が湾曲しているからといって軟骨や骨を除去してしまうと鞍鼻(鼻が凹む)になってしまうことがあります。これらのリスクは術前にCTである程度把握できますが、最終的には手術中に鼻中隔軟骨の強度がどれぐらいあるかによってどのぐらいの矯正が必要になるのかを術者が判断して注意して手術をしています。
より特殊な湾曲(鼻中隔の前方が湾曲している)の場合は、手術にもう少し工夫が必要になります。ご自身の後方の鼻中隔軟骨をずらして前方の湾曲を矯正することが必要な場合があります。この手術をする場合は鼻尖の高さが少し変わる可能性がありますが通常は見た目では判断できない程度と思います。また、鼻中隔の前方が湾曲している場合はもともと外鼻との不均衡が強い方にみられますので、鼻中隔の矯正によって鼻中隔のひずみがとれることで外鼻の形態に少し影響がでることがあります。
鼻中隔弯曲症の手術をすると鼻が低くなる?高くなる?
通常の鼻中隔湾曲症の手術で術後に鼻が高くなることはありません。
鼻中隔軟骨がとても軟らかく薄い場合や、湾曲の程度が大きい場合(鼻中隔と外鼻とのひずみが大きい場合)は術後に鼻が低くなる可能性があります。そうならないように手術前に画像検査等でリスクを判断し、術中に軟骨の強度がどのくらいあるのかを判断して術者が注意して手術をしています。