副鼻腔炎のことがよく分かる動画
~副鼻腔炎の原因から治療まで~
副鼻腔炎(蓄膿症)とは?
感冒などを契機に発症して短期間で治る「急性副鼻腔炎」、3か月以上の慢性症状を伴う「慢性副鼻腔炎」の他、根本的な原因の分かっていない難治性の「好酸球性副鼻腔炎」も近年よく見られます。
副鼻腔で起こる炎症が副鼻腔炎(蓄膿症)
副鼻腔とは、鼻の奥にある空洞のことです。ヒトの副鼻腔には「上顎洞」「篩骨洞」「前頭洞」「蝶形骨洞」と4つの副鼻腔があり、そのいずれかで炎症が起こると「副鼻腔炎(蓄膿症)」となります。
副鼻腔炎(蓄膿症)の種類
急性副鼻腔炎
30日未満で治る副鼻腔炎(蓄膿症)と定義されています。
ウイルス・細菌の感染やむし歯が原因として起こります。また妊娠中の中は、鼻の粘膜がうっ血することで副鼻腔炎(蓄膿症)を発症することがあります。
炎症の強さによっては、副鼻腔の入口が閉鎖して副鼻腔から膿の排出ができなくなり、頭痛や顔面痛、眼痛が生じます。
慢性副鼻腔炎
90日以上症状が持続する副鼻腔炎(蓄膿症)と定義されています。
アレルギー、むし歯、体質、遺伝など、さまざまな原因によって起こります。お子様の場合、免疫力が不十分であったり、アデノイドが大きいことも、慢性副鼻腔炎の発症の要因になると言われています。
悪化すると、粘膜が腫れて鼻茸(鼻ポリープ)を形成することもあります。
慢性副鼻腔炎になってしまうと簡単には治りにくいので、慢性化する前に受診することが早めに副鼻腔炎を治すためにとても大切なことです。
難治性の副鼻腔炎(蓄膿症)「好酸球性副鼻腔炎」
原因不明であり、また難治性の副鼻腔炎(蓄膿症)です。都市部で生活する方に多く見られる傾向があるようで、近年増加傾向にあります。
副鼻腔、鼻茸中の好酸球の増加が見られることから、この名称がついています。好酸球が増加すると、細胞が障害されます。
鼻茸が生じるケースも多く、臭いがしない、鼻詰まりといった症状を引き起こします。また、好酸球性副鼻腔炎から、喘息や肺炎、中耳炎、胃腸炎といった病気を合併することもあります。
副鼻腔炎(蓄膿症)の原因は?
副鼻腔炎(蓄膿症)に見られる原因として多いのが「ウイルス感染・アレルギー・鼻中隔弯曲症・真菌」です。
1、ウイルス感染(風邪など)
2、アレルギー(花粉、ハウスダストなど)
3、鼻中隔弯曲症
4、真菌(カビ)
真菌(カビ)は空気中に浮遊しており、副鼻腔内に入って定着すると副鼻腔炎(蓄膿症)をきたします。副鼻腔真菌症と呼ばれますが、副鼻腔の空間の中にのみ真菌(カビ)がある場合を非浸潤性真菌症と呼び、副鼻腔の粘膜の中にカビが入り込んだ場合を浸潤性真菌症と呼びます。浸潤性は致死性となるため、注意が必要です。 また、非常にまれですが真菌に対するアレルギーが原因でおこるアレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎という病態もあります。
副鼻腔炎(蓄膿症)の代表的な症状は「粘り気の強い黄色い鼻水」
副鼻腔炎(蓄膿症)の代表的な症状は「粘り気の強い黄色い鼻水」です。
水っぽい鼻水が多くなるアレルギー性鼻炎とは対照的です。副鼻腔炎(蓄膿症)が悪化すると、黄色から緑に色が変化することもあります。
鼻水が喉の方に流れる「後鼻漏」も、副鼻腔炎(蓄膿症)の特徴的な症状と言えるでしょう。
その他、以下のような症状がよく見られます。
- 鼻が常に詰まる
- 鼻声になる
- 鼻の穴が狭くなったように感じる
- 鼻詰まりによる息苦しさ
- 鼻の奥、鼻水から嫌なにおいがする
- 頭痛、頭がぼうっとする
- 鼻の周りの痛み
- 目の周りの痛み
- むし歯はないのに歯が痛む気がする
- 顔を動かしたときに頬の奥に痛みを感じる
副鼻腔炎(蓄膿症)を診断するためにはどんな検査をするの?
鼻鏡や内視鏡による検査を行います。鼻水の量・質、粘膜の腫れ、鼻茸の有無の確認も行います。
また、アレルギーを原因としている可能性がある場合には、血液検査も必要になります。
状況に応じて、レントゲン検査、CT検査、MRI検査を行うことがあります。
好酸球性副鼻腔炎の検査・診断について
好酸球性副鼻腔炎は指定難病ですので、診断基準が定められています。好酸球性副鼻腔炎が疑われる場合には、以下を確認し、診断します。
- 血液中の好酸球の数の増加
- 篩骨洞(副鼻腔の一部)優位の副鼻腔炎がある(CT)
- 鼻茸(鼻ポリープ)の有無
- 鼻茸中の好酸球の数
- 気管支喘息の有無
- アレルギーの有無
- アスピリン喘息の有無
- 好酸球性中耳炎の合併の有無
当院で行う副鼻腔炎(蓄膿症)の治療は?
1、保存的治療
鼻水の吸引、鼻洗浄、抗生物質の投与などを行います。特殊なカテーテルで副鼻腔内の洗浄・薬液の注入を行うこともあります。
症状が長引く場合には、少量の抗生物質の使用も検討します。
好酸球性副鼻腔炎の保存的治療
好酸球性副鼻腔炎の場合、抗生物質は無効です。ステロイドの内服、点鼻、吸入薬の使用によって、症状のコントロールに努めます。
2、手術的治療
保存的治療で改善が見られない場合には、内視鏡下副鼻腔手術を行います。
特に真菌(カビ)を原因とする副鼻腔炎(蓄膿症)に対しては、手術が必要になるケースが多くなっています。副鼻腔の形状は患者様によって大きく異なりますので、手術には高度な技術と経験が求められます。
また、むし歯や歯周病を原因として起こる急性副鼻腔炎(歯性上顎洞炎)の治療において、歯科治療と保存的治療の併用で効果が見られない場合にも手術を検討します。
副鼻腔炎(蓄膿症)の疑いがある時にやってはいけないこと
喫煙や飲酒
副鼻腔炎の治療は、鼻副鼻腔内に溜まった粘液を出すことですが、喫煙をすると粘液を出す機能が停止してしまいます。また、飲酒をすると副鼻腔の出口の粘膜がむくんでしまい、粘液が排出できなくなりますので症状を悪化させることになります。
鼻をすする
鼻をすすると副鼻腔の出口の周囲の粘膜がひっぱられて出口が閉鎖してしまうことがあり、副鼻腔内に溜まった粘液が出なくなってしまうことがあります。
副鼻腔炎Q&A
梅雨などの雨の多い時期ほど、副鼻腔炎(蓄膿症)のような症状になりがちなのですが、何か関係はありますか?
結論からいうと、あまり関係はありません。梅雨など雨の多い時期には自律神経の調子が悪くなることが多く、血管が拡張して神経を圧迫することが起こるといわれています。気象病ともいわれていますが、頭痛やめまい、気分の落ち込み、肩こり、関節痛などが起こるとされています。
頭痛が最もよくでる症状ですが、鼻の奥やこめかみ、顔面が重たくなる感じは副鼻腔炎ではなく、上記の自律神経の乱れによって生じていると思われます。
鼻水が溜まってしまい、頬が腫れるなどの症状はありますか?
通常の鼻水が溜まるだけでは頬が腫れることはありませんが、感染を引き起こすと痛みや腫れの症状がでます。副鼻腔炎が増悪して顔の骨の中に炎症が波及してくると、急激に顔面が痛くなり、腫れてきます。
乳幼児では骨が柔らかいために腫れることが多く、成人では虫歯やカビが原因となることがあります。また、副鼻腔炎ではなく皮膚の炎症である蜂窩織炎でも頬が腫れることがあるので、見分けるには検査が必要になります。
副鼻腔炎(蓄膿症)の人と話すと、口臭が強いような気がするのですが気のせいでしょうか?
副鼻腔炎の中でも膿が副鼻腔に溜まっている場合は異臭を伴います。特に虫歯が原因の副鼻腔炎では異臭が強いことが多く、場合によっては口臭の原因にもなります。しかし口臭は副鼻腔炎以外でも起こりうるため、口臭=副鼻腔炎というわけではありません。
手術が怖いので市販薬で治したいのですが、市販薬はやはり効果はないのでしょうか?
市販薬の中でも、漢方薬(チクナイン)は辛夷清肺湯といって、医療機関でも処方する薬と似ています。
軽度の副鼻腔炎でしたら市販薬を服用したり、鼻うがいをしたりすることで軽快する場合もあります。
副鼻腔炎(蓄膿症)に効く漢方薬はありますか?
漢方薬の中では辛夷清肺湯という薬があり、自覚症状の改善度は90%以上という報告もあります。また、葛根湯加辛夷川芎も効果はありますが、生薬の麻黄を含んでおり、胃腸虚弱な場合は注意が必要になります。