子どもの難聴の原因として最も多い滲出性中耳炎
お子様の難聴の原因として最もよく見られるのが滲出性中耳炎です。
お子様の耳管の構造として耳管の狭窄が起こりやすいこと、同じく耳管の構造によって急性中耳炎にかかりやすいこと、炎症が慢性化しやすいこと、アデノイドが大きい年頃(特に4~5歳頃まで)であることなど、さまざまな要因によって難聴を伴う滲出性中耳炎になってしまいます。
放っておくと、将来的な癒着性中耳炎、真珠腫性中耳炎の発症リスクも
滲出性中耳炎は、それほど重度にまで進行することはありません。ただし、お子様の場合に滲出液が溜まったまま放置していると、中耳腔の発達が不十分となり、将来的に癒着性中耳炎、真珠腫性中耳炎のリスクが高まるおそれがあります。たとえ自覚症状を伴わない場合であっても、しっかりと治療することが大切です。
滲出性中耳炎は症状に気づきにくい
小さなお子様の滲出性中耳炎の早期発見・予防のために
滲出性中耳炎の症状を「自覚すること」と「大人に伝えること」は小さなお子様には難しいため、お子様の滲出性中耳炎は発見が遅れることがあります。
耳を気にしている、テレビの音量が大きい、声が大きい、といったご様子が見られたときには他に症状がなくとも、念のため受診されることをお勧めします。
また、急性中耳炎から移行して発症するケースも少なくありません。お子様が急性中耳炎になったときには、毎回きちんと治るまで通院させてあげるようにしてください。
当院で行う滲出性中耳炎の診断と検査
滲出性中耳炎が疑われる場合には、顕微鏡検査、内視鏡検査といった視診が重要になります。また、聴力検査、ティンパノメトリー検査などを行うこともあります。
ティンパノメトリー検査とは:鼓膜に圧を加え、そのときの動きを測定する検査です。滲出液の有無を測る指標となる他、鼓膜の萎縮、腫瘍の有無のチェックにも役立ちます。
難聴の程度で分かれる治療法
比較的軽度の場合
成人の方で、症状がそれほど強くない場合、お薬により炎症を抑え、浸出液が流れ出るような治療を行います。また、鼻から耳に空気を通す通気治療を行うこともあります。
お子様の場合、お薬による治療は成人の方と同様ですが、通気治療には負担の軽い耳管通気器具「オトヴェント」を用います。オトヴェントは、鼻で風船を膨らませることで耳抜きが簡単にできる通気治療器具で、自宅にて自分で簡単に行うことができます。
生活に支障をきたしている場合
難聴症状によって生活に支障をきたしていたり、お薬や通気治療で症状の改善が見られない場合には、発症後2~3か月を目安として、「鼓膜切開術」を検討します。鼓膜の切開によって滲出液が排出されることで、中耳の圧がリセットされ、症状の改善・解消が期待できます。
切開した鼓膜は自然に塞がりますが、その後再び滲出液がたまり滲出性中耳炎が再発するようなケースでは、「鼓膜チューブ留置術」と呼ばれる手術を検討します。小型のチューブを鼓膜に設置し、常に中耳の圧が下がらないようにすることで、症状を改善・解消します。